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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第12章      

 悪い予感とは当たるもの。

 続けられた元コーチの言葉に、ヴィヴィは飛び上がって驚いた。

『思わず「知るかボケぇ! 英国行って本人らに聞いて来いやっ!」って、怒鳴っちゃってねえ~~』

 最後は しなを作りながら「困ったわあ」と、夫にしな垂れかかるジュリアン。

「そっ そんなこと言ったの……っ!?」

 思わず、両手でノートPCを掴み上げるも、

『だってぇ~~「国籍のことは本人たちに任せてます」って、何度も何度も何度も言ったのにさあ。しつこいっての!』

 画面の向こうの母はムシャクシャしているらしく、反省した様子など これっぽっちもなかった。

「……――っっ」

 何故か細い身体が ぶるりと震え。

 ワンピの下の背中に、嫌な汗がじんわり滲んだ。

「……しゃ……っ 謝罪文。謝罪文、出さなきゃっ!!!」

 まさかまさかの “ジュリアンの失言” 

 それが今頃、日本の情報番組で繰り返し放送されているかと思うと、いっても立ってもいられず。

 PCを放り出す様に双子の兄に渡したヴィヴィは、広いリビングの中を歩き始める。



 どうする……? 

 どう書けば、風評被害を最小限に食い止められる……?

 と、とりあえずは謝罪よねっ

 ええと……

「この度は、私共の母 兼 元コーチが、世間をお騒がせし。

 皆様に多大な ご迷惑をお掛けし――」



 発情中の熊が如く、虚ろな表情で ぐるぐる その場を回り続けるヴィヴィ。

 しかし、

『なんてねww』

『あははっ やっぱりヴィヴィは “引っかかった” ねえ~~』

 電話の向こう側から投げ掛けられたのは、そんな おちゃらけ切った両親の声だった。

「…………へ…………?」

 何を言われたのか分からず ぽかんと振り返った娘に、

 画面の向こうのジュリアンは、腹を抱えて笑っていた。

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