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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章
手早く調理を開始したダリルを、双子がダイニングテーブルを拭いたり、グラス等を用意したりとサポートし。
あっという間に出来上がった野菜多めの料理の数々を、3人は囲む。
8人は余裕で集える大きなテーブル。
しばらくはダリルの愚痴が続いていたが、それでもどこか愉しそうで、
ヴィヴィはにこにこしながら相槌を打っていた。
「そう言えばもうすぐネ? 双子の帰国日」
食事も終盤に差し掛かった頃、そう話を振ってきたのはダリルで。
「うん……。2週間後、か……」
少し首を傾げたクリスが返す。
「25日間、日本に行きっぱなしになるけど、ダリルはどうするの?」
ヴィヴィの尋ねに、ナイフとフォークを皿の端に寄せたダリルは、
「ん~、前半は研究するけど。後半は実家にでも帰ろうかナ?」
イングランドのマンチェスター出身の彼は、立ち上がると自分の皿を手に片し始める。
「ヴィヴィは……?」
「え?」
目の前に腰かけたクリスの問い掛けに、小首を傾げて見せれば、
「松濤の屋敷、戻らないの……?」
その途端、ヴィヴィの小さな顔に浮かんだのは、悪さを咎められた幼子の表情。
「……ん……」
「そっか……」
クリスはそう相槌を打つだけで。
「……ごめん……」
謝罪を口にして俯いてしまったヴィヴィを、ダリルは一瞥してキッチンへと引っ込んだ。
先シーズン、東大を休学し 学業から解放されたヴィヴィは、
日本で3種類5公演ものショーに出ながらも、一度も松濤の屋敷へと足を向けなかった。
日本での試合も最小限に抑え、全日本フィギュアと国別対抗戦にしか出場せず。
「別に、僕に謝る事じゃないよ……」
そう言って、テーブル越しに頭を撫でてくるクリスに、
「あ、もうこんな時間!」
キッチンから戻って来たダリルが、壁掛け時計を見て緑の瞳を丸くする。
「ん……? お出掛け?」
顔を上げたヴィヴィが、ダリルを振り返る。
「19時からJCR(ジュニア談話室)で、カクテルパーティーあんの」
この屋敷から徒歩5分の場所に位置するカレッジ――セント・エドモント・ホールの談話室では、日々 色々な催しが企画されていた。