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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章
「………………」
今の自分に残された時間を、指折り数える。
5月2日に迎える22歳の誕生日まで、あと22日しかなく。
更には国籍選択の為の記者会見は、来週に控えていた。
(この選択は、正しかったんだろうか……)
期限が差し迫ってやっと、決断した己の国籍。
将来の事も見越して至った結論だったが、いざこの日本の地に降り立てば、決断が揺らいでしまいそうになるのも現実だった。
街灯にぼんやりと浮かび上がる駐車場で、こっそりと零した嘆息。
(はやく……はやく、オックスフォードに戻りたい……な)
重いスーツケースが、まるで己をこの地に縛り付ける枷の様にも思え。
強張りがちの両肩を落としながら歩を進める。
アスファルトを踏み締める、スニーカの底。
夜の街に異様に響く、ゴロゴロという引き摺り音。
どこか規則正しかったその音が、ふいに止まり。
足を止める原因となった、己に立ち塞がった影に、ゆらりと面を上げれば。
そこに立っていたのは、この世で一番逢いたくない相手――
そう、
篠宮 匠海。
その人だった。