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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章
なるほど、ヴィヴィの言う通り、
10cm程の拳大の丸いつぼみを持つアーティチョークは、まるで宙に浮く惑星に “見えなくも無い”。
「この周りのは?」
隣で慎重に花を活けていた叔母が、蔦を指さしながら尋ねてくる。
「これは……、世の中にはびこる、有象無象……」
そうしたり顔で頷くヴィヴィに、周りの従姉妹達がおかしそうに笑い出した。
「あら、面白い。ちょっと奔放な感じも、ヴィヴィちゃんらしくて、とても素敵」
傍に寄って来た瞳子が、色んな角度からヴィヴィの活けたフラワーアレンジメント(?)を鑑賞してくれて。
その際、瞳子から馨ってきた控え目な香水の香りに、ヴィヴィの灰色の瞳がぱちぱちと瞬いた。
「瞳子、私のは~?」
活け終えたサラが瞳子を手招きすれば、
「うん、サラちゃんのは、包容力いっぱいって感じね? 素敵だわ」
茶色の瞳を細めて微笑む瞳子に、サラが胸の前で両指を組んで喜ぶ。
「やった~♡ 女はやっぱり包容力よね~?」
他の親族の出来栄えも、それぞれの美点を褒めつつ、アドバイスを加えながら少しの手直しを施し。
そして必ず、「素敵」と賞する瞳子に、
「 “素敵” なのは、瞳子さんです……」
そう真顔で義姉を見つめたヴィヴィに、瞳子が照れた様に頬を両手で包み込む。
「まあ……。こんな綺麗な子に “素敵” って言われてしまったわ!」
手放しで喜ぶその様子も、やはり27歳の女性相応の上品な仕草だった。
大きな灰色の瞳が、羨望の眼差しでその様子を見つめていた。
本当に素敵だから――この人は。
美しく分け隔ての無い微笑み。
そつのない身のこなし。
上品でウィットに富んだ会話。
瞳子と話をしていると、まるで自分が素晴らしい人間の様に思えてしまう、その話術と心配り。
彼女こそ、素敵な女性の見本のような人。
まさに、兄に愛されるに相応しい。
その一身に匠海に愛情を受けるに足る人間。
「………………」
薄っぺらいだけしか能がない胸が、剣山を押し当てられたかの様な、じくじくとした痛みを訴えていた。
(この人はどんなふうに、お兄ちゃんを受け止めているのだろう……)