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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第2章    

 自分なんて、まさに、このフラワーアレンジメントのよう。

 立派なアーティチョークの裾根に、ぽつんと転がるしか能の無い、みすぼらしい果実。

 自分なんて、中身は空っぽで。

 目はアンバランスに大きいだけだし。

 唇は薄くて貧相だし。

 胸も尻も無い。

 男である兄を悦ばす術を、何一つ持っていない自分。

 けれど、

 そう、自分にもし義姉に勝(まさ)っているところがあるとすれば、それは――

「インナーマッスル……」

「え?」

「インナーマッスルくらいしか、誇るところ無いですよ、私」

 細く高い鼻からふんと、微かな息を吐いたヴィヴィに、

「ぶはっ ヴィヴィ、インナーマッスルがチャームポイントな訳? 超受ける~~っ!!」

 メリッサのそのからかいに、周りの叔母達が「もう、ヴィヴィったら」と、おかしそうに笑う中、 

「そんなことないわ。女の子は女の子というだけで素敵なんですもの」

 瞳子だけは柔らかな微笑みを湛え、華奢な肩に手を添えて励まして(?)くれて。

 その暖かさと優しさに、ヴィヴィは余計に凹んでしまった。

 きっと兄の家には、瞳子手ずからのフラワーアレンジメントが溢れていて、

 上品で、けれどセンスの良い家具が配置されていて。

 それはきっと、匠海にとって過ごし易く安心する場所――。

 薄紅色の唇がむににと、真一文字に引き結ばれる。

 何だか先程から、己を卑下する事ばかり考えている自分に気付き、

 ヴィヴィはそろそろ この場を後にした方が良いと悟った。

「ヴィヴィ、アレンジメント、持ってかないの?」

 静かに踵を返したヴィヴィに対し、サラがそう声を掛けて来るが、

「ん……。いらない」

 己の作品を一瞥したヴィヴィは頷く。

 そのまま放置して立ち去ろうとした時、

(あ……、そうだ……)

 使用したアーティチョークを引っこ抜いて、厨房で茹でて貰い食べてしまおうか?

 そうすれば、この情けない作品が残る事もないし。

 名案を思い付いたヴィヴィが、緑の太い茎に手を伸ばした瞬間。

「じゃあ、俺が貰う」

 隣から発せられたその言葉の主に、斬新過ぎるヴィヴィのアレンジメントが取り上げられてしまった。

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