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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章
内側から灯された室内の明かり。
開け放たれた扉から伸びたそれにスニーカーの脚を照らされても立ち尽くしている妹を、兄は中から首だけを覗かせて呼ぶ。
「ヴィヴィ、何してる? 早く入っておいで」
そう促し自分はさっさと中へと引っ込んでしまった匠海に、取り残されたヴィヴィはというと ただただ失望していた。
幼い兄妹達の為に建てられた、築14年の別荘。
毎年夏になると海水浴を楽しむ為に、家族で訪れていた。
しかしそれも上の兄が思春期に入ったり、双子がフィギュアで多忙になったりで、しばらくその存在すら忘れられていた。
そして、次に訪れたのは今から6年前――15歳の4月。
初めての五輪で金メダルという、とんでもない快挙を成し遂げた妹のお強請り――という名目で実現した、兄妹での初めてのデート。
それから月日が経ち4年後の19歳の3月まで、ヴィヴィは何度もこの別荘を訪れていた。
誰にも見咎められずに、
血の繋がった実の兄と “性行為” を持つ為に――
「………………」
未だフードを被ったままの小さな頭が、見上げていた建物から徐々に落ちていく。
それで無くとも3時間、1人でリンクを貸し切って滑り込んだ疲労に、
兄のむごい仕打ちと この抗えぬ現状という負荷が更に積み重なり。
重い両脚を引き摺る様に玄関ホールへと踏み出したヴィヴィは、2年ぶりとなる かつての逢引きの場へと脚を踏み入れた。
広い玄関ホールの先に広がる、ガラス越しに臨める水平線にも。
その先、2階まで吹き抜けで一面ガラス張りの贅を凝らしたリビングにも。
何一つ視線を向けず、ずっと己の爪先だけを睨み付けながら歩を進め。