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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章
リベンジポルノ。
騒がれるようになってから だいぶ経つが、今でも時折問題として表面化するそれが、
まさか己の身に降りかかってくるなど、考えた事すらなかった。
たまに意識を飛ばす癖に、不用心だと詰られても何の言い訳も出来ない。
ただ、
自分は信じていたのだ、匠海の事を――
『白いドレスのお姫様のヴィクトリアも、泡まみれのヴィクトリアも、ガラスのケースに入れて飾っておきたいね』
以前の兄の口癖だったそれ。
妹に念願のベビードールを着させた時でさえ、スマホを取り出す事は無かったし。
更に写真を撮る際は、ちゃんと着衣をした意識のある状態で、本人の了承を得てなされていた。
『大人しく着いて来た方が、身の為だと思うが――?』
数刻前に突き付けられた脅し。
匠海はそれだけしか、あの画像について語っていない。
つまり、自分を辱める画像があの1枚だけであるとは限らないのだ。
「……いつ、から……?」
無意識に口をついて出た疑問に、答えてくれる相手はいない。
もしこの卑劣な行為が15歳の頃から秘かに続けられていたとしたら、その枚数は計り知れないし。
何より、今まで黙って所持するだけだったそれらを「いつか切り札として使用するかも」と、保管し続けていたのだとしたら――
バスタブに乗せていた両腕が湯の中に落ち、大きな水音を立てたそれは次の瞬間、金色の頭を文字通り抱え込んでいた。
自分は一体、匠海にとっての何だったのだろう――?
ある時は、恋人。
ある時は、良い妹。
ある時は、愛人。
兄は自分に様々な仮面を被る事を求めてきたけれど、
果たしてその中に、真実はあったのだろうか?
それは本人に確かめねば解からぬ事。
だが、馬鹿な自分でも解る事が1つだけあった。
もう、匠海にとっての自分は、愛情を確かめ合う相手でも、心を寄せ合う相手でも無い。
ただ振り回し、その躰を自由にする権利だけを主張したい相手なのだろう。