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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章
咄嗟にキッチンから飛び出したヴィヴィは、ダッシュでダイニングを突っ切り、遅刻寸前の学生ばりにリビングに滑り込んだのだが。
「み、観ないでっ!!!」
華奢な両手両足をめい一杯広げ、テレビの前に立ち塞がった頃には、既に映像は次のCMへと変わっていた。
「いや、これ。もう3ヶ月は流れてたし」
妹の剣幕に驚く事も無く、さらっとそんな事実を口にした匠海に対し、
突然の事にアタフタし湯上りの頬を更に染めてしまった妹は、一瞬その場で硬直し、
「……~~っ」
しかし次の瞬間には「ふんっ」という効果音が聞こえそうなほど、ぷいとテレビの前から離れて行った。
Lady Violet(レディー ヴァイオレット)
200人ものフランス女性によって開発された、フランスの本格オーガニックスキンケアブランド。
その日本進出に世界各国で知名度の高い双子に白羽の矢が立ったのだが、如何せんCMを撮ったのは昨年の年末で。
その放映を目にする前に渡英したヴィヴィは、その存在を全く失念していたのだ。
「もう2時か。小腹空いてるんじゃないか?」
極薄のラップトップPCを閉じた兄は、ソファーから立ち上がりながら話し掛けてくるが、
そそくさとキッチンに戻ろうとする妹は、聞こえないふりをしてやり過ごす。
「適当に作ったから、つまんで先に寝るといい」
「………………」
「おやすみ、ヴィヴィ。また明日な?」
無反応の妹にそう就寝挨拶を投げた兄は、そのまま家族風呂へと消えていった。
浴室の扉が閉められた音を確認したヴィヴィは、先程ダッシュで通り過ぎたダイニングにちらりと視線を移す。
大きなダイニングテーブルには、オードブルとシャンパンが準備万端整えられており。
しかも、涼しげなガラス皿に並べられた一口サイズのそれらは、
深夜2時という時間とトップアスリートである妹の身体も考慮してか、なんと色取り取りの野菜だけで作られたものだった。