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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第13章
少し前までなら、簡単に言いくるめる事の出来た幼女も、もう4歳ともなると色々な知恵を付けるものである。
『え~~……』と困った声を上げた匠海に、にんまりしたヴィヴィは名案を口にする。
『おにいちゃまは、ヴィヴィのにゃんこ!』
『え゛~~……』
『「え~~」じゃないもん。ほら、「にゃん」って言って~~?』
『……~~っ』
妹の悪意の無い(?)おねだりに、兄は珍しく口をパクパクさせ、
恐らく要望に応えようと頑張ったらしいのだが、結局「にゃん」などと鳴く事も無く。
最終的には色素の薄い肌を赤面させてしまった。
加えて、柔らかな表情で兄妹を見守っていた筈の五十嵐に於いては こちらに背を向け、笑いを噛み殺すのに必死の様子で。
『うふふっ おにいちゃま、かぁわいぃ~~♡』
初めて目にした匠海が慌てふためく様子に、幼女なりに持ち合わせている母性本能が擽られ。
短い両腕を めい一杯伸ばしたヴィヴィは、目の前の赤面した兄の頬を挟み ちゅ~~と唇を押し当てた。
6歳も下の妹にからかわれ、更には「かわいい」と ほっぺにちゅーを許してしまった現状の照れ隠しか。
すくっと立ち上がった匠海は、有無を言わさずヴィヴィをひょいと抱っこしてしまった。
『ほら、海に行こうね。3時のおやつまでには、マム来れるって』
『ホント!?』
『うん。だからクリスと一緒に、マムに綺麗な貝殻探してあげようね?』
『……っ うんっ』
弾けんばかりの笑顔を浮かべたヴィヴィは、ひしっと匠海の首に縋り付く。
そのまま別荘から坂を下れば、少し離れた波打ち際にいたクリスと執事・朝比奈の姿が目に入った。