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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章        

「「嘘よ」って言ったら信じるの?」

「信じるさ。当り前だろう!」

「ふぅん……。私はお兄ちゃんの全てが信じられないのにね?」

「………………」

 襟を握り続けていた拳が、一瞬 怯(ひる)み。

 辛そうに見下ろしてくる切れ長の瞳が、ぐっと険しさを増しても。

 昔の男に与えた とどめの言葉を撤回する気は、さらさら無かった。


 己と同時期に交わった女を口説き、婚姻を結んだことも。

 「愛しているのはお前だけ」と偽りの言葉を吐きながら、2人も子を授かったことも。
 
 そして今、

 卑怯な手で従わせようとしている卑劣な行為も。

 普通に考えて、自分が目の前の男を信じられる根拠は、

 何ひとつ無いだろう――?


 兄妹の間に降りた沈黙は、これ以上なく重苦しく。

 はしたなく乳房を晒しながらも、兄を見上げる瞳の強さは怯む事は無かった。

 とっとと襟元の拘束を解かれ、この別荘から解放されるのを待ち侘びるヴィヴィに、

 しかし寄越されたのは、予想とは全く異なる言葉だった。

「昨夜――」

「え……?」

「……昨夜のは、演技だろう?」

「……――っ」

 単刀直入に確信へ迫った兄の言葉に、見上げていた大きな瞳がハッと見開く。

 羞恥でサッと朱に染まった頬を、バツが悪そうに背けた その態度は、

 口で弁解せずとも「演技だった」と認めているも同然の浅はかな行為だった。

(……うそ……っ うそ、バレていたの……!?)



『おにいちゃま』

『おにいちゃま』

『おにいちゃま』


 金の頭に木霊するのは、歯が痛くなるほど甘ったるい声音。

 男の愛撫を従順に受け入れながらも、

 もっと触れて欲しい、

 もっと悦くして欲しい、と、

 まだ未発達で理性など持ち合わせない、

 どこまでも貪欲で堪え性の無い、性の虜になった “幼女” のそれ。

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