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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
「匠斗~~。クリスマス以来だね。元気だった?」
自然に浮かんだ笑顔のまま甥の前にしゃがみ込めば、
小さく丸っこい肩の上に見慣れぬものが鎮座しているではないか。
つぶらな瞳に ふさふさの長い尻尾。
そして口の前で両手をモゴモゴさせた、その小動物はといえば、
「リスぅ~~」
そう、匠斗の言う通りリス――シマリスだった。
「わあ! 凄い、リスだ。どうしたの、可愛いぃ~~❤ 飼って貰ったの?」
興味津々に尋ねるヴィヴィにも、甥は「リス~~」と連呼するのみで。
「うん、リスさんだねえ?」
まだ語彙はそれほど増えていないらしい。
大人しく肩に乗っているリスの頭を指先で撫でようとするも、両手で顔を洗い始めてしまい。
目を細める仕草にも うっとりして見惚れていると、
「りすぅ~~っ」
今度は短い腕を持ち上げ、隣に立っているクリスを指し示した匠斗。
「え……? リス? って、もしかして、クリスが?」
「うん……。兄さんも義姉さんも、プレゼントしていいって言うから……」
妹の隣にしゃがんだクリスは、目の前の小さな黒い頭を大きな手で わしゃわしゃ撫でる。
そういえば双子の兄は、甥っ子に「りす」呼ばわりされていたっけ。
「ま……まさかの、ダジャレ?」
“クリス(りす)がリスを飼い与える” を、やってみたかったのだろうか?
らしくない行動に ぷっと吹き出したヴィヴィに構わず、クリスは匠斗に言って聞かせる。
「弟と一緒に、可愛がってあげてね……?」
「りす!」
にっこり頷いた匠斗の肩から、その頭の上へとリスが昇っていく。
その様子を見つめながらも、ヴィヴィは首を傾げた。
「弟――って?」
しかしその疑問の答えを与えたのは、隣にしゃがんでいるクリスでも無く。
勿論 匠斗でも無かった。