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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
「そうなの~~。また男の子なんですって。もう、私は女の子を育てたいのに」
横から掛けられた女性の声に咄嗟に振り仰げば、
そこには五十嵐に荷物を預けながら玄関ホールへと入ってくる義姉――瞳子がいた。
「ああ……。あ、ご無沙汰してます」
すくっと立ち上がったヴィヴィが、微笑を張り付かせながら挨拶する一方、
返されたのは大輪の花が咲き誇る様な優雅な笑み。
「うふふ。こっちはテレビで2人の事、しょっちゅう観てるからいつも会ってる気になってるわ」
「2歳違いの弟……。良いじゃないですか、匠斗、キャッチボール出来る……」
続いて立ち上がったクリスの言葉に、瞳子は「確かにね」と同意しながらも残念そうで。
「こうなったら、女の子を授かるまで産み続けようかしらね? 匠斗も妹 欲しいよね~~?」
現役バリバリで活躍している華道家らしくない発言に、その息子は言葉が解らないらしく きょとんと見上げるだけだった。
「兄さんは……? 一緒じゃないんですか……?」
「ええ。会議が長引いたらしくて、少し遅れるそうよ」
双子の兄と義姉が会話を交わしながら、両親の待つリビング方向へと歩いて行く。
その後ろ姿を見つめるヴィヴィの手に、暖かな何かが触れた。
両親に瓜二つの大きめの口で にっこりする甥の手を取り、ゆっくりとした足取りで後を追う。
背後からでも判る、明らかに突き出た義姉の腹。
仕事柄立ち仕事も多いのだろう、時折 腰をさする仕草をみせていた。
「女の子が良いのに」と言いながら、それでも幸福で満ち足りた表情を浮かべる瞳子を直視出来るほど、
自分は人間が出来ていないらしい。
『何でっ! どうして “妹” なんだっ!!』
『こんなに……、こんなにも、お前だけを愛しているのに――っ』
たった1日前、兄から投げ付けられた言葉。
そう叫んだ匠海からは、嘘偽りは感じ取れなかったけれど。
(……嘘、ばっかり……)