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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第14章
10分後 遅れて家族団欒の場に駆け付けた兄の姿に、心も身体も重く沈んで。
生まれてくる2人目の孫の様子を根掘り葉掘り尋ねる両親へ、詳細に説明する匠海の声に、
失望したのか、軽蔑したのか。
己の全身を駆け巡る血液が、老廃物に侵されたドロドロしたものに置き換わっていく。
そんな悪寒に自分の全てが塗り潰されていくのを感じていた。
21時にはディナーの席を辞したヴィヴィは、酒を口にしたクリスとは別にリンクへと戻った。
兄に葉山へ拉致され丸1日滑れなかったが、さしたる影響も無く。
2日後から始められる新FSの振付に備え、淡々と身体を整えると2時間で氷を降りた。
白のMT車である愛車を難無く操り、屋敷の門をくぐってすぐ、
灰色の瞳は目敏く “ある印” を見つけ、玄関アプローチの車寄せに停車させた。
使用人に荷物と車を預け3階に位置する己の部屋に直行し、バスを使い。
就寝準備を整えたヴィヴィは、左隣の部屋へと続く扉を開けると、
闇が広がるその先、固く閉じられた1枚の扉をも躊躇せず押し開いた。
「なんだ、お姉さんいないの?」
「え?」
キングサイズのベッドの真ん中、ベッドヘッドに半身を預け読書をしていたらしい匠海は、
ヴィヴィが指摘した通り、どこからどう見ても独りで。
「つまらないの」
拍子抜けした様子で呟きながらベッドによじ登ってくる妹を、兄は止めることは無かった。
小花柄の半袖ナイトウェアの裾をたくし上げ、ぽすんと腰の上に乗ったヴィヴィに、
分厚い書籍を脇に置いた匠海が「おかえり」と声を掛けながら、金の頭をひと撫でする。