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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章
「だって~~、ヴィヴィに「モニャコGP行こうヨ!」って言ったって、絶対首を縦に振らないでショ?」
双子の間にずいっと割って入ったダリルに、シャツから手を離したヴィヴィが喚く。
「あ……っ 当たり前でしょっ」
そう。
クリスとダリルが目指していた目的地は、パリでも無ければニースでも無く。
なんと、あの忌まわしき(?) “モニャコ公国” だったのだ。
モニャコGP(グランプリ)。
英国発祥であり1950年から始まったモータースポーツ、その最高峰――F1(フォーミュラーワン)
年間約20戦行われる試合の中でも、サーキットではなく市街地で行われるモニャコGPは特に有名で。
王室が観覧する御前レースでもある。
よって、当然の如く “モニャコ公国” にて行われる。
つまり、あのゴキ○リ王子ことフィリップが全世界の衆目を一身に浴びているその地に、
かつて噂のあったヴィヴィが阿呆みたいに乗り込んでいく――という自殺行為に等しい愚かな行いを、
この2人は だまくらかして強いようとしているのだ。
“火の無い所に煙は立たぬ” という先人からの有難い教えがあるというのに。
ある筈も無い火種に わざわざ自分から薪をくべる様な馬鹿なマネ、誰がするというのだ。
「だから仕様が無かったんだってバ~。フィリップがモニャコに招いてくれる交換条件が「ヴィーを連れて来てくれるなら」だったんだもン!」
コート・ダジュール空港のターミナルの一角で、ニースの眩い日光を浴びながら腰をくねらせゲロる親友に、
「~~~っっ 簡単に友を売るんじゃないよ~~っ!!!」
そう喚いたヴィヴィは、ウィッグをひん剥いてやろうかと両腕を伸ばしたが、
百戦錬磨の女装家は、ひらりと身を翻して魔の手から逃れてしまう。