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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章
(好まれる音楽は、国が違っても共通するよね~~)
潮の香り滲む暖かな風が半袖から伸びた肌を撫で、ヴィヴィはうっとりと目蓋を閉じた。
昨日までは分刻みの生活と、慣れぬインターバル・トレーニングに打ち込んでいたのが嘘の様。
背凭れに預けた両肩から何かが降りた気がして、口角が自然と上がる。
(あんなにギャーギャー抵抗しちゃったけど、まあ、来て良かったかな~~)
不意に訪れた休息日――そのきっかけを強引な手法ながら作ってくれた二人に感謝の言葉を贈ろうと、閉じていた目蓋を上げたのだが。
「………ん………?」
細い喉から漏れたのは疑問を含んだ小さな音。
数秒見開いたままだった瞳、そして、目をつむっていたわずか数秒の内に変貌した眼前の様子に固まる表情筋。
(な、なんだぁ~~っ!?)
右側のお店から出て来たウェイターが銀盆を片手に踊りだし、反対から歩いてきた観光客がありえないほど軽快にスーツケースを回しながらダンスしている。
(……? な、なんかノリのいい街? なのかなあ???)
その後も続々と踊る人数が増えていく。
老若男女問わず皆がバラバラの踊りを楽しんでいる様子で、だがしかし、何故かその一員になろうという気は起きなかった。
頭の上に?を浮かべながら傍観していたが、いつの間にかボリュームアップしていた曲と、サビの部分になると一斉に我々のテーブルに向って踊り狂う面々に、ようやく状況を察したヴィヴィ。
Cause it's a beautiful night
We're looking for something dumb to do
Hey BABY, I think I wanna marry you
「………………」
(うわぁ……マジですか……)
太っちょなコックさんが人付きのする笑みを浮かべながら、滑稽なダンスで近づいてきて。
エプロン姿の花屋の娘さんが、薔薇の花を手に適当なステップをし。
売り物のF1カーモデルを左右交互に突き出してくる土産物屋のおばちゃんが、こちらへにじり寄ってきて。
それらの人々に目の前の視界を遮断されたと思った、次の瞬間。