この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第15章
『世紀の大告白』と謳われてもおかしくない筈のこの事件を、仕掛けたはずの本人達が面白おかしく笑い合っていて。
しかも、国の王位継承権第一位の皇太子への扱いがあまりにも雑な事に、ヴィヴィはようやく気付く。
「……な、なんなんだ? ここの国民は……」
自分が育った国では国民と皇族には一定の距離が存在している(とヴィヴィは感じている)が、目の前の皆にはそんなものは全く感じられない。
そして、もうひとつ。
ヴィヴィはやっと、一週間前に宣言された言葉を思い出した。
『まあ、いいさ。これからヴィーは、嫌でも俺のことを意識しなければならない状況に陥るからね。ふっはっはっ』
(……そういうことか。ていうか、更に悪いほうに警戒しだしたのは、確か……)
「まあまあ、坊ちゃん……じゃなくて嬢ちゃんか。せっかくだから、うちのショコラでも食べてけ。ほれほれ」
愛らしさの残る顔を盛大に引きつらせたヴィヴィ雄(もといヴィヴィ)の正体を見抜いていたオジサマに勧められショコラを口にしたが、味なんて解かる訳もない。
「ど、どうも……、美味しいです……」
(しかも、げ、劇団員とかじゃなくて、本当にここの住民だったのか……)
色々な情報が一気に入ってきて、独りこの状況に取り残されたヴィヴィに対し。
「きゃ――っ!? これ王冠(クロンヌ)よネ! 皇室御用達のショコラトリーの♡」
差し出された王冠型のショコラに目を輝かせる同居人と、「やっと面倒から解放された」と言わんばかりに市街地の地図を開き始めた双子の兄。
そして、いつの間にかそのテーブルに交じりコーヒーを注文しているフィリップ。
「………………」
(なんだかなあ……。薄々気づいていたけど、私の事からかって楽しんでるだけだよなあ、このゴキブリ王子……)
そんな事をして何が楽しいのかと、呆れた眼差しを向ければ、
「ヴィー、いつも可愛いけれど、モニャコにいる君は、更に内から発光でもしているように輝いて見える!!」
彼こそ昔の仏映画の銀幕にいても引けを取らぬ程の容姿のくせ、月とすっぽんくらい対極にあるヴィヴィを褒め称えられても、素直に受け入れられる訳がない。
二人が並ぶとどうしても、西洋絵画vs漫画 くらいかけ離れていると思ってしまうのだ。