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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第16章
ようやく唇を解放された妹は、飄々と前述の問いを口にする。
「で、仕事、終わった?」
「……はぁ……。もう持って帰る」
「お兄ちゃん」
「ん?」
「セックス、する?」
「――っ お前がここに現れてから、どうすればどう口説けばホテルに連れて行けるか。それだけに考えを巡らせていたよっ」
余裕を欠いた欲情を兄に認め、妹に浮かんだのは少し安堵を覚えた表情。
気持ち良い事は好き。
兄とするのはもっと好き。
でも一番欲しいのは、確認したいのは、まだ私に欲情しているという証拠。
一瞬、薄い唇からこぼれそうになった「お姉さんが命を懸けて二人目生んで間もないのに、もう不倫出来るんだ?」という言葉をすんでのところで飲み込む。
小さな頭の中にちらついたのは「3Pしてあげる」と挑発した時の、心底憔悴しきった匠海の表情。
(………………)
「変態」
自分から「セックス、する?」と挑発したくせに、そう詰ってくる妹に、兄は盛大に肩を落としたのだった。
「はぁ……。もう今日は、とことん苛めてやるからな」
兄の香りが濃くなったと思った。
そうか、
自分が年を重ねたように 兄も年を重ねたのだ。
ふっと嗤いが零れる。
私の知らない日常で、兄が手にした香り。
私の知らない、匠海が過ごした日々が、その芳香に凝縮されている。
そのことに気にして、兄が「何?」と問うてくる。
「なんでもない」
兄も同じ様に、私が年を重ねたことを、何処からか感じているのだろうか。