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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第16章     

各国の名スケーターと観客と共にカウントダウンを行い、その後のバックヤードでシャンパンで乾杯し合っていると、トリノの地元紙の記者がハンディーカメラを向けてきた。

「Felice Anno Nuovo!(明けましておめでとう) 今年もヴィクトリア選手と新年を迎えられて、イタリアのファンは喜んでますよ」

「Buon Anno! 私も嬉しいです」

金のフサフサショールを首に巻き、金の三角帽をかぶったヴィヴィが、カメラへと向かってシャンパングラスを掲げる。

「五輪プレシーズン、各試合でぶっちぎりの金でした。もう五輪の金も見えてるんじゃないですか?」

「いえいえ、まだ世界選手権も控えていますし、五輪は今ジュニアの子達が大活躍するでしょうし、全然気は抜けませんよ」

二ヶ月半後に中国で行われるシーズン最難関の戦いに向け、小さな顔は引き締まったが、しかしシャンパンに口をつければ、またいつも通りに戻った。

「世界選手権での活躍を我々も期待しています。ところで、これだけの強さを誇れるその秘訣は何ですか?」

記者のその問い掛けに、それほどルーティーン等も無いヴィヴィは金の頭を傾げ「秘訣……? 秘訣、ですか……」と呟く。

「う~~ん。まあ強いて言えば「この瞬間が最期かもしれない」と思ってること、ですかねぇ?」

「最期、ですか?」

素面の時ならば「地道に練習を重ね、それを自信に変えている」と教科書通りの返答をしたのだが、いかんせん飲酒&ゆく年くる年の解放感?で気が緩んでいたヴィヴィは、頭の中であまり纏まっていない状態で口を開く。

「ええと、う~~んと、あ、ほら! 人間誰しも「明日で世界が終るかもしれない」じゃないですか? そんな気持ちで日々過ごしていれば、嫌でも強くなれますよ……、ね? ね?」

本人としては毎日スケジュールが分刻みにびっしりで、一杯いっぱいの状態で過ごしているので、それをそんな風に言ってしまったのだが。

尋ねた相手は何故か、痛いオカルト信者を見るような微妙な視線を寄越してくる。

「ど、どんな私生活を送ってると、そういう気持ちを持続出来るんですかね……?」

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