この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第16章
「え~~?」と、間延びした声を上げつつ若干面倒臭くなってきたヴィヴィは、近くを通りかかったイタリア・男子シングルのマッテヨ・リッツォに「お疲れさま――!」と手を振ると、
記者には「秘密です~~♡」と誤魔化しつつ切り上げたのだった。
だが、話しはここでは終わらなかった。
このバックヤードの様子はイタリアではケーブルテレビで生中継されていたのだが、その後にロッカーに戻って帰り支度を始めたヴィヴィの元に、メールが届く。
何十件ものあけおめメールに続き、やはりあったのは兄からのもの。
『明けましておめでとう。
ヴィクトリアと離れてまだ一週間しか経っていないのに、もう何ヶ月も顔を見ていないみたいに寂しいよ。
てことで、国別が終わったら二人でどこか旅行へ行かないか?』
文面の最後に「いやいや、そんなの無理でしょ」と思わず突っ込んだヴィヴィは、指でも同じように打ち込んで返信する。
匠海からの応えはまるで待ち構えていたかのように、すぐに返ってきた。
『無理じゃないよ。
それに「明日で世界が終るかもしれない」なら、今やりたいことをやらないとな』
「………………」
若干うすら寒さを覚えるような返答に、薄い唇から細く嘆息したヴィヴィは、
(ストーカー、かな……?)
と心の中で最愛の男を皮肉りながらも、その指はスマホのスケジュールを即座に開き、己のスケジュールに少しでも空きがあるのか真剣に調べ始めるのだった。