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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第16章     

「え~~?」と、間延びした声を上げつつ若干面倒臭くなってきたヴィヴィは、近くを通りかかったイタリア・男子シングルのマッテヨ・リッツォに「お疲れさま――!」と手を振ると、

記者には「秘密です~~♡」と誤魔化しつつ切り上げたのだった。

だが、話しはここでは終わらなかった。

このバックヤードの様子はイタリアではケーブルテレビで生中継されていたのだが、その後にロッカーに戻って帰り支度を始めたヴィヴィの元に、メールが届く。

何十件ものあけおめメールに続き、やはりあったのは兄からのもの。

『明けましておめでとう。
 ヴィクトリアと離れてまだ一週間しか経っていないのに、もう何ヶ月も顔を見ていないみたいに寂しいよ。
 てことで、国別が終わったら二人でどこか旅行へ行かないか?』

文面の最後に「いやいや、そんなの無理でしょ」と思わず突っ込んだヴィヴィは、指でも同じように打ち込んで返信する。

匠海からの応えはまるで待ち構えていたかのように、すぐに返ってきた。

『無理じゃないよ。
 それに「明日で世界が終るかもしれない」なら、今やりたいことをやらないとな』

「………………」

若干うすら寒さを覚えるような返答に、薄い唇から細く嘆息したヴィヴィは、

(ストーカー、かな……?)

と心の中で最愛の男を皮肉りながらも、その指はスマホのスケジュールを即座に開き、己のスケジュールに少しでも空きがあるのか真剣に調べ始めるのだった。





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