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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第16章     

3月22日(土) 世界選手権 中国・ハルビン 女子FS。

冒頭、打ち鳴らされたパーカッションに追随するのは、木管楽器の不気味な高音の吹き伸ばし。

胴前で扇子を開くフリをしたのち掌を返し、それを胸の前へかざす。

ミュートを付けた金管楽器が応える中、「ひぃ、ふぅ、みぃ」と三つぶり(顔を左・前・右と動かす)を成した女は、ぴしゃりと扇子を閉じ、それを口で噛むフリ。

木管としゃがれた金管の掛け合いにブレードを滑らせつつ、身体に纏わりつく紫のかつぎ(透ける素材の着物)の袖・袂をタスキ掛けするフリは、

「亡き旧友宅に図々しく上り込む招かざる客」への「饗応の開始」を意味する。

極端な音域・音色、そして楽器の組み合わせによる違和感。

饗応の開始を告げるトランペットのファンファーレが轟く中、踏み切った3回転アクセル+3回転ループ。

高さ・幅・軸ともに申し分ないそれらに場内に歓声が上がるが、それも一瞬のこと。

演者の錯乱・動揺・行動の無秩序に恐れをなしたかの様に、再び沈黙したリンク。

扇子の要返し(ひらひら扇子が舞うよう指で回転させる)を掌でなぞりつつ、シャッセ、モホーク、チョクトーと踏み分けたエッジは、何の躊躇いもなく3回転アクセルを踏みきった。



一年前の4月――

FS『饗応夫人』の振付を一度断った宮田は、それでもヴィヴィが「己の矛盾と向き合う」という条件の下、引き受けてくれた。

と同時に、振付の根幹を成す「日本舞踊」の舞踊家との繋がりも作ってくれた。

日舞には200を越える流派が存在するが、中でも五大流派と謳われている流派の一つ、花柳流。

そして、その師範である花柳 鈴(りん)。

さっそく彼女とアポを取り、互いのスケジュールの暇を縫っては、その教えを乞うていた。

日舞に触れた事が皆無のヴィヴィだったが、

眉の書き方、紅のさし方、髪の結い方、着物の違いなど緻密に計算されて作られていること。

手の高さ、頭の角度、全身の筋肉の使い方などにより、性別・年齢を表現していること。

それらに深く共感し。

更には基礎の教えを乞うている際、ぴしゃりと掌を叩かれ、

「胴中で踊れていないと、手をはたかれるとぐらつくの。フィギュアも体幹が基本でしょう?」

と諭されれば、日本古来の芸能と北欧発祥のフィギュアの共通点の多さに驚きもした。

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