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淫と乱
第5章 ドロドロ
 
 追っていた彼女の姿が扉の向こうに消えた。

 プレハブの建物の一階。

 端にある部室は、あたしが顧問をしている部活の隣の部屋。


…授業は始まっているのに…


 バレー部の部室に用がある筈がない。

 大会があるとも聞いていない。

 ましてや、恭子先生の話によれば、昨夜の被害者はバレー部の部員たち。

 話を聞く限り、追っていた彼女が登校してきた事が不思議なくらい。

 明らかにおかしかった。

 戸惑いながらも、バレー部の扉へと近付いた。

「…んあっ……はぁっ………あぁ…っ………」

「んひぃっ…ひぃっ……っくうぅぅぅっ………」

 近寄れば、薄い扉越しに聞こえる艶めかしい声。

 学校では到底聞こえてはいけない声。

 まだ朝も早い時間。

 それに加えて、明らかに複数の女子の喘ぎ声。

 それが意図する事は、いくら男勝りと言われているあたしにだって分かる。

 あたしも過去には色々ヤっていた。

 それこそ、彼女たちくらいの時には、所構わずに喘いでいた。

 経験なら彼女たちには負けない。


…って、張り合ってる場合じゃなかった……


 ハッと我に返って、慌てて扉に腕を伸ばす。

 思った事が現実に起きているなら、いくらなんでも止めさせなければならない。

 指先がドアノブに掛かった。

 その反動で、僅かに開いた建て付けの悪い扉。

 隙間から、より鮮明に複数の艶めかしい声が聞こえてくる。

 いよいよ以て、バレー部の部室で行われている事が想像出来た。

 それでも、いまいち確証は無い。

 念の為にと、軽く前屈みになって扉の隙間から中を覗いた。

「…っ!?」

 視界に飛び込んできた光景に、あたしは言葉を失った。

 余りの衝撃的な光景に前屈みの体勢の儘、脚を動かす事が出来なかった。

 映る光景に、目も離せない。


…な…何なの……アレ………


 目を見開いて、信じ難い光景を見詰める。

 そんなあたしに近寄る気配があったなど、この時は気付きもしなかった。


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