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淫と乱
第5章 ドロドロ
【恭子 View】
「全くぅ…信じられなぁいっ」
不満が勝手に口を吐く。
「まぁ、機嫌治してくださいよ、ガハハッ」
暗がりの中、隣を歩く赤ジャージのムキムキ教師が慰めてくれる。
何かバカにされてる気もするけど。
それでも、深夜に一人で歩くよりは余程良かった。
無意味だった会議が終わって一緒に学校を出た、三瀬先生と薄井先生とは既に別れた夜道。
あんな事があっただけに、一人で帰るには心許なかった。
譬え、赤ジャージのムキムキ教師と一緒だとしても。
…というか…下校まで…赤ジャージなのぉ?…
…ホントに…何で音楽の先生なんて………
傍に居るだけでこうやって、気を紛らわせてくれる。
今だけは、このムキムキ教師に感謝。
「ん? 私の顔に何か付いてますかな? ガハハッ」
「えっ!? いや、その………」
気付かない内に、顔を見詰めていたみたいだった。
慌てて顔を逸らす。
ポツンポツンと僅かな街灯が照らす道路。
昼間と違って人気が全く無くなった通学路。
少し足早になった私のヒールの音と、ムキムキ教師のバカ笑いだけが響いている。
「しかし、こんなに遅くなるとは参りましたね、ガハハッ」
ちっとも参ったようには聞こえない。
でも、この先生が言ってるのも尤も。
まさか、日付が変わる直前まで学校に居るとは思わなかった。
遅くなる事を真希ちゃんに伝えてもいない。
こんな事は初めてだけに、きっと心配してるに違いなかった。
そう思うと、私の手はバッグの中へと伸びていた。
手探りでバッグの中を漁る。
「…あれ?」
探る指先に目的の物が触れない事に、私は脚を止めた。
「どうしました? ガハハッ」