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淫と乱
第5章 ドロドロ
体育館であんな事があった筈なのに恐怖感は無かった。
ただ、携帯を探す事だけが頭を占めていた。
既に日付は変わっていた。
校門が開いていた事もあって、何の躊躇いも無く校内へと脚を踏み入れた。
…そう言えば…鍵………
教職員用の玄関扉の前ではたと脚を止めた。
四人で一度学校を出てから、既に三十分は過ぎている。
まだ校内に残っている先生も居たが、今も残っているのか分からない。
せっかく戻ってきても、鍵が掛かっていては意味が無かった。
…きっと…誰か居るわよぉ…
一縷の望みを抱いて、扉に手を掛けた。
指先を把っ手に掛けた腕を引けば、ガチャッという虚しい音と扉の抵抗。
アッサリと私の希望を打ち破ってくれた扉。
…ま…まさかねぇ……
現実を認めたく無かった。
今度は微妙に力を込める。
無機質なガチャッという音。
「……………」
更に僅かに力を込める。
「……………」
もう少し力を込める。
「……………」
更に力を込める。
「………扉のクセにぃ………」
もう少しばかり力を込めた。
「………ふっ………」
思わず微笑。
別に額に青筋なんて浮かんでない。
別に私がバカ力って訳でもない。
きっと、扉が壊れ掛かっていただけ。
バキッと破壊音が聞こえたのは気のせい。
とにかく、扉が開いたのは事実。
私は真っ暗な校舎の中を、感覚だけで歩きだした。