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淫と乱
第7章 グイグイ
【杏子 View】
午後の陽が射し込む、授業中で人気の無い廊下を足早に進む。
常日頃、生徒たちに走るなと口煩く言っている手前、あたしが走る訳にもいかない。
バレー部の部員たちが気になる。
あれから数時間は経っていた。
あたし自身、気を失っていて数時間の間、何もされていなかった事に驚きながらも安堵した。
しかし、今はあたしよりも部員たち。
最早、部室の中がどうなっているか想像もつかない。
それでも、あたし一人ではどうする事も出来ない。
彼女たちの脚の間から這い出る、緑色のダンゴ虫みたいな生き物の姿が頭の中に蘇る。
思い出しただけで、あのヌメヌメとした光沢と見た目の不気味さに鳥肌が立つ。
あんなのに一人で立ち向かいたくない。
とにかく、報告が先だと脚は動き続ける。
目当ての扉の前に立つと、軽くノックをする。
「…どうぞ」
返ってきた言葉と同時に扉を開いた時だった。
瞬間に生々しい臭いが鼻を突いた。
「…くさっ……」
黙っていられなかった。
思わず眉を寄せて、顔を顰めた。
「…何か用かな?」
声を掛けられた事で目的を思い出す。
扉の前で立ち止まっている訳にもいかず、部屋の中へと脚を踏み入れる。
進む度に強くなっていく臭い。
眉間の皺が深くなっていくのが分かる。
…この臭い……まさか……
男勝りのあたしでも、この臭いは嗅いだ事がある。
学校では有り得ない臭いが、この部屋に充満していた。
「…り、理事ちょ……へ?」
理事長の傍へと近寄ってその姿を目にした時、間が抜けた声を吐き出したと同時に目を丸くした。