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淫と乱
第8章 カシャカシャ
「…どうせ得体の知れない付喪神ブルっ………」
「つ、つくちゃん、あのね………」
「…そう思われても仕方ないブルよね………」
「だ、だから………」
フヨフヨと浮いてる携帯。
無生物のくせに、やたら悲壮感をぷんぷん漂わせている。
画面には『泣』の一文字。
「も、もお、つくちゃぁん………」
いくら無生物とは言え、普段はやけに明るいつくちゃんの声が沈んでいると、凄い罪悪感を覚える。
「…あれでも…助けるのに頑張ったブルのに……」
「それは凄い助かったからぁ。つくちゃんのお陰で大助かりだよっ。流石、つくちゃんだよねっ」
携帯を煽ててる真希も何をしてるんだか分からなくなってくる。
「…だったら……ご褒美欲しいブルっ」
「へっ!?」
突然、何を言い出すんだ、つくちゃん。
「…助けたご褒美…欲しいブルなぁ……」
つくちゃんの言っているご褒美なんて、安易に想像がつく。
画面に『涙』とか出しておきながら、依然として脇の空間には真希のイヤらしい画面のスライドショーが続いている。
「でも、いっぱい撮ってるじゃぁんっ」
脇目でチラチラと画像を見ると、ミミズ擬きを咥えた生々しさ全開のワレメがどアップで映っていた。
耳まで熱い。
「…それとこれとは違うブルっ」
「真希からしたら一緒だってぇっ」
「…でも…欲しいブルっ……」
徐々に再び口調が沈んでいくつくちゃんに、顔を赤くしながら狼狽える。
「……も、もぉっ………」
やはり、沈んだつくちゃんを見ていられない。
「………分かった…からぁ………」
「…じゃぁ、直ぐに撮るブルっ」
観念した言葉を吐き出した瞬間、いつもの明るい口調に戻ったつくちゃん。
「えっ!?」
「…さぁ、さっさと撮るブルよぉっ」
「いや……帰って…からでしょ?」
「…時間が勿体ないブルっ。
今なら誰も来ないから大丈夫だブルっ」
画面には『勝』の一文字。
やられた感が芽生えた。
逆に折り畳んでも、誰も文句は言わないと思った。