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淫と乱
第10章 砂浜
「あ、いや…何でも………」
不意に洩れた言葉を聞かれていて、何と無く気恥ずかしい。
「まぁ、聞いて無かった事にしといてあげるよ」
聞かれて困る事を言った覚えはないけど、スルーしてくれるなら有り難い。
「てか、アンズ先生……その荷物………」
ホッと安堵したのも束の間、アンズ先生の姿に目を丸くした。
「いやぁ…あれもこれも必要かと思ったら…こんなに………」
いつもは凜凜しい表情のアンズ先生のはにかんだ表情。
海に来るだけで、どうしてバッグが三つも要るのか分からない。
しかも、どれもこれもパンパンに膨れ上がっている。
「あは…は………」
アンズ先生のレアな表情を見ても、渇いた笑い声しか溢れない。
きっと顔も引き攣っているに違いなかった。
「それより、学校じゃないんだからアンズ先生は止めてよ」
「あ、うん」
苦笑を浮かべるアンズ先生の表情に頷く。
学校に居る時は厳しいイメージしかないアンズ先生も、プライベートとなると僅かながら柔らかい雰囲気になっていた。
「ほらぁ、二人とも行くよぉ」
脚が止まった儘で居た真希とアンズ先生に、いつの間にか離れていたお母さんの急かす声が、数メートル先から届いた。
「ご、ゴメンっ」
「待ってよぉっ」
お母さんの脇に佇む美奈ちゃんの待ちくたびれた雰囲気を察して、真希とアンズ先生は慌てて歩きだした。