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淫と乱
第2章 ヌメヌメ
 
「ちょ、ちょっと、部長っ! そんな目ぇトロンとさせてる場合じゃ……」

 慌てて大声を張り上げる。

 直ぐ様、一本の触手が丸みを帯びた先端をアタシに向けてきた。

「あ、危なっ!」

 大声を出してる場合じゃなかった。

 抱き着いている部長ごと体を逸らせば、顔の脇をヌメッとした触手が伸びていった。

 僅かに鼻に突く生臭さ。

 どす赤い表面に血管の様な黒い筋が無数に透けていた。

 間近に見れば見る程、グロさが際立つ。


…そういえば……一体コイツらって………


 誰かの悲鳴が聞こえてから、ドワッと湧き出た感じだった。

 体育館の扉は閉まっているだけに、何処からか侵入してきたとは思えない。

「って…今はっ……考えてる場合じゃっ…なかったっ」

 顔の脇で体を伸ばしていた触手。

 部長ごと巻き付いてこようとするのを、ひたすら避け続ける。

 余り俊敏では無いアタシ。

 それでも避けられる事で、一縷の希望を持ち始めていた。


…このまま……一気に出口まで………


 他の部員に目を奪われている脳天気部長を無理矢理引っ張り、絡み付こうとする触手を避けながら扉へ向かおうとした時だった。


……囲まれてる…んだった………


 逃げようにも、周りはグルッと触手だらけだった事を思い知らされた。

 思ったより避ける事が出来た為に余裕を持ちすぎた。

 思わず立ち止まったアタシ。

 目に映るのは無数のヌメヌメした触手と、喘ぎ声をあげ続けている部員たち。


…もう……マズイ…よね………


 頬にツゥッと汗が流れた。

 触手の生臭い臭いがやけに気になりだした時だった。

「…え……なに………?」
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