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淫と乱
第1章 プロローグ
 
「昨夜未明。○○県△△市の空地にて、再び若い女性の惨殺された遺体が発見されました」

 苦々しくニュースを読む若い女性アナウンサーの表情に、画面を見詰める二人の表情も曇っていく。

「女性の体内からは異様な量の体液が検出され、警察は早急にDNA鑑定を進めている模様です。…女性の遺体に衣服は無く、警察は連続婦女暴行殺人事件として捜査を続けていく方針です。また………」

「ウチの近く…だよね……」

 ニュースを続ける女性アナウンサーの声を遮る真希の呟き。

「そうなのよぉ…。これで何人目だか分からないくらい………」

 嘆息混じりに言葉を吐き出しながら、恭子は身支度を整えていく。

「ウチの学校は…大丈夫なんだよね」

「そんな話は聞いた事無いけどぉ」

 朝の明るい雰囲気は、一転して重苦しいものとなっていった。

「まぁ、真希ちゃんも気をつけるのよぉ?」

「それ言うなら、お母さんだって…。
 狙われるの…女の人ばっかなんだし………」

 真希は、黒いタイトミニの裾からスラリとした美脚を太腿から覗かせてジャケットを羽織る恭子に心配の眼差しを向ける。

「じゃあ…お互いに気をつけないとねぇ」

「う、うん……」

 恭子の間延びした口調に危機感を削がれながらも真希が頷けば、恭子は慌てたように玄関へと向かっていった。

「あらあらぁ。もうこんなじかぁんっ。
 …真希ちゃん、しっかり戸締まりねぇっ」

 急いでいながらも、口調はノンビリした儘の恭子。

「分かって………」

 真希が吐き出した返事は、恭子がバタンッと勢い良く閉めた扉の音に因って掻き消されたのだった。

 テレビの音だけが流れるリビングに一人残された真希。

 再び朝食を口にする事は無く、変わりに口から溜め息が溢れだした。

「…真希も……準備しなきゃ………」

 一糸纏わぬ姿でテーブルの上を片すと、真希は自室へと姿を消していった。


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