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真紅の絆
第2章 1話
「や、…やだぁ…ッ…とけ…ちゃ…ぅ…ッ」
頭の中の必死に作っていた「壁」が溶けてなくなってしまう。
目の前に入る主の存在だけが全てになってしまう。
「まさ…かげさま…ッ!」
「桃、怖がるな。俺だけを感じろ――ッ」
幾度となく昇りつめては弾けて飛ぶ悦楽。
胎内に迸る雅影の熱を感じながら、桃丸の瞳からとめどない涙が落ちる。
「まだだ…桃」
中にある主はまだ熱い。
桃丸は、早く終わって欲しいような、永遠に自分を侵食して欲しいような、まとまらない渦の中にいるようだった。
○◎○
桃丸は主の肌に触れるのが好きだった。
自分よりも大きな手。見上げると温かな眼差しで見つめ返してくれるその優しい瞳が大好きだった。
「若さま…」
幼い自分の声に、手をつないでいた主が握る手に力を込めた。
目の前に夕日が広がる。山の向こうには故郷がある。故郷まで、どこまでも続いていく空に、桃丸は想いを馳せる。
人質として他国に来ていた主と家臣の子である自分。
どことなく、周りの視線が冷たくよそよそしいことを幼いながら感じていた。
「若さま、おそらがまっかだね」
見たまんまのことを言って、さみしさを笑顔に変えた。主もそんな桃丸に笑って返した。
明るかった空が暗くなる。その境目のこの時は美しくも心細く感じていた。
頭の中の必死に作っていた「壁」が溶けてなくなってしまう。
目の前に入る主の存在だけが全てになってしまう。
「まさ…かげさま…ッ!」
「桃、怖がるな。俺だけを感じろ――ッ」
幾度となく昇りつめては弾けて飛ぶ悦楽。
胎内に迸る雅影の熱を感じながら、桃丸の瞳からとめどない涙が落ちる。
「まだだ…桃」
中にある主はまだ熱い。
桃丸は、早く終わって欲しいような、永遠に自分を侵食して欲しいような、まとまらない渦の中にいるようだった。
○◎○
桃丸は主の肌に触れるのが好きだった。
自分よりも大きな手。見上げると温かな眼差しで見つめ返してくれるその優しい瞳が大好きだった。
「若さま…」
幼い自分の声に、手をつないでいた主が握る手に力を込めた。
目の前に夕日が広がる。山の向こうには故郷がある。故郷まで、どこまでも続いていく空に、桃丸は想いを馳せる。
人質として他国に来ていた主と家臣の子である自分。
どことなく、周りの視線が冷たくよそよそしいことを幼いながら感じていた。
「若さま、おそらがまっかだね」
見たまんまのことを言って、さみしさを笑顔に変えた。主もそんな桃丸に笑って返した。
明るかった空が暗くなる。その境目のこの時は美しくも心細く感じていた。