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真紅の絆
第2章 1話
「きょうのごはん、なにかなぁ?」
「一緒に採ったきのこがあったよな?あれが出てくるんじゃね?」
「…ははうえも…おいしいごはんたべてるかなぁ…?」
故郷の母のことを口に出す、幼い自分。
そして若様と呼ばれていた当時の雅影もまだ、子供の域を出ていない。
「桃は母上に会いたいか…?」
雅影の声は悲しさを滲んでいた。桃丸から母を奪ってしまったと思っていたのかもしれない。
「あいたいな…。若さまは、若さまのははうえにあいたくないの?」
「俺は…桃がいればいいかな。桃がいれば寂しくねーし…」
桃丸が寂しがるから、雅影は「寂しい」と言えなかったんじゃないのか――今ではそう感じるのに、幼い自分は何も考えていなかった。
「…ごめんなさい」
弱音を吐かせてあげられなくて――。
温かくて逞しい腕の中でまどろみながら、主の背中を抱きしめる。
「桃…」
こめかみに落とされた口づけ。
意識が覚醒してくると、外からカラスの鳴き声が聞こえた。
目をあけると、雅影が茶屋の窓を開けていた。
夕日が広がっている。燈の光に照らされた雅影の背中は、大きくてどこか孤独を漂わせていた。
三年前、雅影の姉姫と隣国の武田家との婚姻が整うと、雅影は家督を継ぐためにこの地に帰って来た。
家督を継いだ今、人質の頃とは違う重責を担った。
たった一人で背負う国。孤高の人。
「一緒に採ったきのこがあったよな?あれが出てくるんじゃね?」
「…ははうえも…おいしいごはんたべてるかなぁ…?」
故郷の母のことを口に出す、幼い自分。
そして若様と呼ばれていた当時の雅影もまだ、子供の域を出ていない。
「桃は母上に会いたいか…?」
雅影の声は悲しさを滲んでいた。桃丸から母を奪ってしまったと思っていたのかもしれない。
「あいたいな…。若さまは、若さまのははうえにあいたくないの?」
「俺は…桃がいればいいかな。桃がいれば寂しくねーし…」
桃丸が寂しがるから、雅影は「寂しい」と言えなかったんじゃないのか――今ではそう感じるのに、幼い自分は何も考えていなかった。
「…ごめんなさい」
弱音を吐かせてあげられなくて――。
温かくて逞しい腕の中でまどろみながら、主の背中を抱きしめる。
「桃…」
こめかみに落とされた口づけ。
意識が覚醒してくると、外からカラスの鳴き声が聞こえた。
目をあけると、雅影が茶屋の窓を開けていた。
夕日が広がっている。燈の光に照らされた雅影の背中は、大きくてどこか孤独を漂わせていた。
三年前、雅影の姉姫と隣国の武田家との婚姻が整うと、雅影は家督を継ぐためにこの地に帰って来た。
家督を継いだ今、人質の頃とは違う重責を担った。
たった一人で背負う国。孤高の人。