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真紅の絆
第3章 二話
「はぁ?勤め?義務感かよ?」
「それ以外になにがあるって言うんですか?」
宣伸院の館はすぐ前。
なのに、険悪な空気になってしまった。乱暴に雅影は桃丸の手を振り払う。
「だよな。俺とお前は主君と家来だもんな。そうだよな」
その声に、桃丸の胸に後悔が押し寄せる。泣きたくなるような悲しさも。
でも、訂正することは出来なかった。
○◎○
正座して待つことしばらく。宣伸院が静かに現れると、雅影と桃丸は頭を下げる。
「…母上、しばらくぶりです」
「宣伸院さま、ご無沙汰でございまする」
雅影の声はやや無愛想だ。
母親の前で照れもあるのかもしれないけれど、桃丸とのやり取りも引きずっている。
「桃丸どの、可愛いお花をありがとう。そういえば昔、霞(かすみ)とすみれをよく摘んだわ。貴方を見ていると、十五歳の頃のあの子を思い出す…」
宣伸院は遠い目をして微笑んだ。
その目は桃丸を通して、亡き母を見つめている。
母、霞はもともと椿姫の侍女として姫野家にやって来た。幼い頃から仕えている、という点では雅影と桃丸の関係に似ている。
生前、とても仲がよかった二人。桃丸が幼い頃から、宣伸院は実の子のように桃丸を可愛がってくれた。
そんな宣伸院を見ていると、亡き母の思い出が蘇る。先ほどの悲しい気持ちが少し癒されていくような気がした。
「桃丸どのは優しいですね。本当に霞に似ている。晴貞どののお部屋もきれいなお花で彩るのですよ。文句を言うなら私に言いなさいと伝えなさい」
「は…はぁ」
二人のやり取りを面白くなさそうに見つめる雅影の空気に、桃丸は不安を覚える。
「それ以外になにがあるって言うんですか?」
宣伸院の館はすぐ前。
なのに、険悪な空気になってしまった。乱暴に雅影は桃丸の手を振り払う。
「だよな。俺とお前は主君と家来だもんな。そうだよな」
その声に、桃丸の胸に後悔が押し寄せる。泣きたくなるような悲しさも。
でも、訂正することは出来なかった。
○◎○
正座して待つことしばらく。宣伸院が静かに現れると、雅影と桃丸は頭を下げる。
「…母上、しばらくぶりです」
「宣伸院さま、ご無沙汰でございまする」
雅影の声はやや無愛想だ。
母親の前で照れもあるのかもしれないけれど、桃丸とのやり取りも引きずっている。
「桃丸どの、可愛いお花をありがとう。そういえば昔、霞(かすみ)とすみれをよく摘んだわ。貴方を見ていると、十五歳の頃のあの子を思い出す…」
宣伸院は遠い目をして微笑んだ。
その目は桃丸を通して、亡き母を見つめている。
母、霞はもともと椿姫の侍女として姫野家にやって来た。幼い頃から仕えている、という点では雅影と桃丸の関係に似ている。
生前、とても仲がよかった二人。桃丸が幼い頃から、宣伸院は実の子のように桃丸を可愛がってくれた。
そんな宣伸院を見ていると、亡き母の思い出が蘇る。先ほどの悲しい気持ちが少し癒されていくような気がした。
「桃丸どのは優しいですね。本当に霞に似ている。晴貞どののお部屋もきれいなお花で彩るのですよ。文句を言うなら私に言いなさいと伝えなさい」
「は…はぁ」
二人のやり取りを面白くなさそうに見つめる雅影の空気に、桃丸は不安を覚える。