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真紅の絆
第2章 1話
「こんなのかすり傷ですから!」
「ふざけんな!桃の身体は頭のてっぺんから爪の先まで俺のもんだ。それを傷つけやがって…!」
「おおげさですよ!」
大声で揉める二人を遠巻きに見る観衆の視線に、ギクッとした。
桃丸は「まずいですよ。お忍びじゃなくなっちゃいますよ」と侍の耳元で囁く。
侍もまた、ムッとした顔で「…そうだな」と呟いた。
「とりあえず、手当をしよう。刀傷は早めに手当した方がいいからな」
侍は桃丸の腕に自らの手ぬぐいを当てる。
優しく手を引かれて街道を抜けた。
○◎○
時は戦国時代――。
ここは中規模の大名である姫野家が治める領地である。
代々の領主が善政をしているおかげか、大きな国ではないものの、活気のある街は人々で賑わっている。
樋口桃丸は、姫野家家老・樋口晴貞(ひぐち はるさだ)の嫡男として生まれ、領主・姫野雅影(ひめの まさかげ)の小姓として勤めを果たしている。
齢十五歳。
桃丸は六歳の頃から、雅影のもとに仕えていた。
雅影が人質として、隣国の領主のもとに囚われの身であった頃から共にある。
「殿…困ります。ああいう騒ぎを起こすのは」
苦い顔をして、前を歩く自分の主君に苦言を呈す。イラッとした顔をして、主君は桃丸を振り返った。
「はァ?騒ぎを起こしたのはお前だろうが!お前がカッコつけて「ちょっと待てよ」とか出て行ったんじゃねーかよ!」
「ええー!そこから見てたんですか!?だったらもっと早く、平和的に解決してくださいよ!」
「まさかお前が、あの程度のゴロツキに苦戦するとは思ってなかったんだよ!なんで刀抜かなかったんだよ?」
「だって大ごとになっちゃうと思ったし…」
「俺的にはお前が斬られる方が大ごとだよ!なにやってんだよ…ったく」
「…すみません」
幼いころから公私ともに仲のいい小姓のため。
助けに入ってくれたのは、桃丸の主である雅影であった。
「ふざけんな!桃の身体は頭のてっぺんから爪の先まで俺のもんだ。それを傷つけやがって…!」
「おおげさですよ!」
大声で揉める二人を遠巻きに見る観衆の視線に、ギクッとした。
桃丸は「まずいですよ。お忍びじゃなくなっちゃいますよ」と侍の耳元で囁く。
侍もまた、ムッとした顔で「…そうだな」と呟いた。
「とりあえず、手当をしよう。刀傷は早めに手当した方がいいからな」
侍は桃丸の腕に自らの手ぬぐいを当てる。
優しく手を引かれて街道を抜けた。
○◎○
時は戦国時代――。
ここは中規模の大名である姫野家が治める領地である。
代々の領主が善政をしているおかげか、大きな国ではないものの、活気のある街は人々で賑わっている。
樋口桃丸は、姫野家家老・樋口晴貞(ひぐち はるさだ)の嫡男として生まれ、領主・姫野雅影(ひめの まさかげ)の小姓として勤めを果たしている。
齢十五歳。
桃丸は六歳の頃から、雅影のもとに仕えていた。
雅影が人質として、隣国の領主のもとに囚われの身であった頃から共にある。
「殿…困ります。ああいう騒ぎを起こすのは」
苦い顔をして、前を歩く自分の主君に苦言を呈す。イラッとした顔をして、主君は桃丸を振り返った。
「はァ?騒ぎを起こしたのはお前だろうが!お前がカッコつけて「ちょっと待てよ」とか出て行ったんじゃねーかよ!」
「ええー!そこから見てたんですか!?だったらもっと早く、平和的に解決してくださいよ!」
「まさかお前が、あの程度のゴロツキに苦戦するとは思ってなかったんだよ!なんで刀抜かなかったんだよ?」
「だって大ごとになっちゃうと思ったし…」
「俺的にはお前が斬られる方が大ごとだよ!なにやってんだよ…ったく」
「…すみません」
幼いころから公私ともに仲のいい小姓のため。
助けに入ってくれたのは、桃丸の主である雅影であった。