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真紅の絆
第2章 1話
今日は雅影もまた、お忍びで花見を楽しんでいたのであった。
「ま、街で偶然桃と会うってのも滅多にないことだからな。ちょっとあそこの宿屋で休んで行こうぜ」
桃丸の左腕に撒かれた手ぬぐいも徐々に赤く染まっていく。
先ほどまで大して痛みは感じていなかったものの、時間が立つとズキンズキンと痛んでくる。
「痛むか?」
そう訊かれて。でも正直に言うと、また主の怒りがあの浪人達に向きそうだったから…。
「平気です!」
と笑顔で答えた。
○◎○
「おい、焼酎とサラシあるか?あと、こいつ休ませたいから二階借りるぜ」
宿屋に着くと、雅影は店主に告げた。
手には一時休むにしては大金すぎる硬貨を持っている。
お忍びとして地味な風態ではあったものの、雅影の着物は見るものが見れば上質なものであるとわかる。
桃丸もまた、良家の子息らしい上品な着物を着用している。
見るからに上級武士の二人組。店主はすぐさま用意を整えてくれた。
そして雅影は言わなくていいことまで付け加える。
「あ、それと。俺とこいつ“そういう仲”だから。二階には近づくなよ」
桃丸は思わずぶッと吹き出してしまう。
店主は「あ……あぁ、そうですか」と曖昧な笑みを浮かべ、逃げるように雅影の前から姿を消す。
この時代、「衆道」という男子同士の恋愛が盛んであった。
女子との恋愛とはまた違う意味を持つ、武士階級独自の慣習である。
「ま、街で偶然桃と会うってのも滅多にないことだからな。ちょっとあそこの宿屋で休んで行こうぜ」
桃丸の左腕に撒かれた手ぬぐいも徐々に赤く染まっていく。
先ほどまで大して痛みは感じていなかったものの、時間が立つとズキンズキンと痛んでくる。
「痛むか?」
そう訊かれて。でも正直に言うと、また主の怒りがあの浪人達に向きそうだったから…。
「平気です!」
と笑顔で答えた。
○◎○
「おい、焼酎とサラシあるか?あと、こいつ休ませたいから二階借りるぜ」
宿屋に着くと、雅影は店主に告げた。
手には一時休むにしては大金すぎる硬貨を持っている。
お忍びとして地味な風態ではあったものの、雅影の着物は見るものが見れば上質なものであるとわかる。
桃丸もまた、良家の子息らしい上品な着物を着用している。
見るからに上級武士の二人組。店主はすぐさま用意を整えてくれた。
そして雅影は言わなくていいことまで付け加える。
「あ、それと。俺とこいつ“そういう仲”だから。二階には近づくなよ」
桃丸は思わずぶッと吹き出してしまう。
店主は「あ……あぁ、そうですか」と曖昧な笑みを浮かべ、逃げるように雅影の前から姿を消す。
この時代、「衆道」という男子同士の恋愛が盛んであった。
女子との恋愛とはまた違う意味を持つ、武士階級独自の慣習である。