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宵闇
第9章 溶ける
胸が熱くなる。
葉月くんが私をこうやって肯定してくれるなら、もうそれだけでいいってそう思えた。
はあ……と息を吐き、手の甲で涙を拭う。
理解してくれる人がいるというだけで、こんなにも心が楽になるなんて────。
不思議だけれど、そんなふうに思えると、あれは確かに自分にも否があったのだろうということを素直に認められる気がした。
先輩が言っていたことも、一理あるのかもしれなかったと。
だから私は、それを口にした。
「……でもね、葉月くん」
ん? と──落ち着いたトーンの声。
葉月くんには何を話してもいいんだと、そんなふうに思わせてくれる。
「でも……私の気持ちがちゃんと先輩に伝わってたらこんなことには……ってやっぱり思ったりもする。
そしたら先輩も不安になったり……私を強引にでも自分のものにしたいとかそんなふうにならずに済んだのかなって……」
「琴音ちゃんはちゃんと伝えたんでしょ?」
「あ、うん……信じてもらえなかったけど……」
「だったら信じないそいつが悪い。
勝手に疑心暗鬼になって、琴音ちゃんの気持ちを考えずに力ずくとか──庇える要素なんかひとつもないよ」
そう、言い切られた言葉の強さ。
熱いままの胸が、きゅうっとなぜか苦しさを訴える。
葉月くんはどうしてこんなにまで『私』を守ってくれるのか──そんなことを考えながら、葉月くんをただ、見つめた。