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宵闇
第9章 溶ける


私の視線はしっかりと受け止められながらも、それから──と、続く言葉。


「それから……しても気持ちよくなれないのは琴音ちゃんのせいじゃない」

「……え」


そこにふれられ、戸惑いながらも聞き返す。


「だってそんな精神状態だったら、そうなるのも無理ないと僕は思うよ」

「葉月くん……」

「女の子って、男みたいに単純じゃないっていうし」

「……でも、ほんとに全然気持ちいいなんて思えなかったし……っていうか、あんな行為でそんなふうになれるなんて……どうしても思えない」


私が覚えていること。
ひたすらに奥を突かれ続ける苦しさ。
揺さぶられるために掴まれた腰の痛さ。
耳に届く、荒い息。私の名前を呼ぶ上ずった声──思い出し、また、勝手に顔が歪むのがわかり咄嗟に俯いた。


「……もうしたくない?」


かけられた問いに、頷く。

あんなの、女にとって何がいいのかわからない。
しなくて済むことなら、もう避けたい。もうしたくない。


「痛くて苦しいだけだもん……」


呟くような小さな声での答えも、葉月くんには届いたようだった。


「それは最初の無理矢理なときだけじゃなく、毎回ずっとそうだったの?」


頷きで、言葉を返す。


「……そっか」


そして聞こえてきたのは微かな、息を吐く音。
黙って、葉月くんの次の言葉を待った。


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