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宵闇
第9章 溶ける
「──ねえ琴音ちゃん」
やがて呼ばれた名前に、そっと顔を上げると
「してるときちゃんと濡れてた?」
突然そんなことを聞かれ、意味がわかった瞬間かあっと顔が熱くなり、たまらず俯いた。
「ごめんね?
……でもそこ大事なとこだから」
「あ、うん……」
恥ずかしかったけれど、葉月くんが大事だってそう言うなら──と、下を向いたままで答える。
「……と、その……先輩からは、あまり濡れない、って」
舐めた指をねじ込むように挿れられ、激しく動かされ──ただ、痛いだけだったそれを思い出す。
溜め息と共に言われたその言葉。
まだ覚えてる。
「そんな状態で挿れられたの?
だったら痛いのも当然────」
「あ、でも」
言いかけた葉月くんの言葉を遮った。
まだ、続きがある。
だからちゃんと言わなくちゃ、と、言いづらさに躊躇いを覚えながらも口にする。
「その……だから、ローション……使ってた」
冷たくて、ぬるっとしたあの感触。
「先輩が……濡れないと挿れるとき痛いから使うよ、って」
「……そう」
確かに使うことで、挿れられるときはそうでないときより楽にはなったけど、突かれ続けるうちに乾いてくるのか……次第に痛みを覚えていたことを思い出す。
でも、そんなこと言えなくて、ずっとがまんしてた。
終わったあとのあのひりひりした感じと、自分でティッシュで拭うときの虚しさ──ひとつの記憶に連動するように、次から次へと思い出していく。心の痛みを伴いながら。