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宵闇
第9章 溶ける
溜め息をつきながら、答えた。
「葉月くんの言う通りだったとしてもやっぱり無理だと思う……。
だって私、ほんとにそういう体質なのかもしれないし。
そしたら、彼氏できてもまた同じことの繰り返しになっちゃいそうだもん……」
また、してもつまんないとか……そう言われたりするかもしれない。
これから私に好きな人ができるかなんてわからないけど、もしできても、その相手からそんなふうにまた言われたら……もう本当に立ち直れない気がする。
「やっぱり、無理……」
「無理?」
「だってこわいよ」
「でもこのままじゃ、なんだかそいつにずっと囚われてるみたいで……琴音ちゃんずっとつらいままだよ?」
私は、立てた膝に顔を埋める。
「そんなに大事なのかな……」
「え?」
「それって……男の人にとってはそんなに大事なこと……?」
私はしなくて済むならそうしたいけれど、という思いからか、無意識のうちにそう言っていた。
「……女の子にとっても大事なことじゃないかな」
それに、葉月くんの静かな答えが返ってくる。
「好きな人と抱き合うのって、ほんとだったらすごく幸せを感じられるものだと思う」
ゆっくりと、私に言い聞かせようとするかのようなその話し方。
「そういうものなのかな……」
それでも私は、やっぱりわからなくて。
「私もそんなふうに思いたかったな」
出てきたのはそんな諦めとも取れる言葉。
「……大丈夫。琴音ちゃんにもそう思える相手がきっとこれから現れるから」
頭をぽんと撫でてくれる葉月くんの慰めの手にも、苦笑いしか返せない。