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宵闇
第9章 溶ける


はっきり──って。


……心臓が。
自分の心臓の音がとてもうるさくて。
どくんどくんと、まるで何かを訴えるかのようにその存在を主張してる。


「琴音ちゃん……セックスのとき濡れないし、しても気持ちよく思えない、って言ってたでしょ? 」

「……それは……!」

「だから、ほんとにそうなのか試してみよう?」


その言葉の意味を思い、かあっと一気に顔が熱くなった。


「相手が悪かっただけだって、僕が証明してあげる」

「────っ」

「そしたら少しは自信にならない? 
これから好きな人ができても、変に引け目とか感じることなく行動できるって思わない?」


何でもないことのように葉月くんは言う。


でも──葉月くんと試すって……葉月くんと、するってことで……。


……そんな……そんなの無理に決まってる────!


「だ、だめ……」

「どうして?」

「だって私たち兄妹だもんっ」


そんなことしちゃいけない関係だって、葉月くんもわかってるはず──なのに。


「でも義理のでしょ?」


私の言葉に怯むことなくさらりと口にする。


「そうだけど……っ、でもっ」

「大丈夫。最後まではしない。
……僕はただ、琴音ちゃんもちゃんと気持ちよくなれるってことを教えてあげたいだけなんだ」


ね? と、言っている内容はきっと普通じゃないのに、口調はいつもの優しいそれ。


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