この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第9章 溶ける
すべてを終えたらしい葉月くんが、横たわったままの私に覆い被さるように顔を寄せ、そっと頭を撫でてくれた。
相変わらず穏やかな手。優しい指先。
こんなふうにしてもらったあとでも、それは何も変わらない。
「……琴音ちゃん」
呟くように私の名を呼ぶ。
ん……? と少し首を傾けながら答えた私に、続けて言った。
「琴音ちゃんはつらい経験をしたかもしれないけど、身体を愛されるって……本当は今みたいにちゃんと気持ちよくなれるものなんだよ?」
優しい、笑み。
「だから──したくないとか……きらいだとか痛いとか、そんな印象だけ持たないで?」
すっ……と、私の頬に伸ばされた長いきれいな指。
張り付いていたらしい髪が、避けられる。
「琴音ちゃんはちゃんと感じてた。
……すごく濡れてたの、わかるよね?」
こくん、と頷く。
私、確かに感じてた。
気持ちよかった。
葉月くんにさわられて、すごく気持ちよかった────。
「ここから先も同じ。
相手に丁寧にしてもらえば、ちゃんと気持ちよくなれるはずだから……大丈夫だから」
ここからって……ああ、そっか。
セックスは、このあとがあるんだ。
これだけじゃなかった。
まるで夢の中にいるかのような精神状態のまま、ぼんやりとそのことを考える。
そして、『相手に』という言葉に……そうだったと。
葉月くんが、どんな気持ちで私にこんなことをしてくれたのかを、あらためて思い出す。