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宵闇
第10章 葉月
……あれは、琴音が高校に入った年の夏の終わりだっただろうか。
一緒に帰ろうと校門を出たとき、ひとりの少年が琴音を呼び止めた。
僕の方をちらりと見て、『話がある』と言いながら。
──告白するつもりなのか、とすぐに気づいた。
琴音は本当に可愛い子だった。
顔もそうだが、何より性格がいい。
優しくて、素直で……きっともてるだろうな、と思っていたから。
その場を離れ、少ししてからなんとなく気になって振り向くと、ふたりは僕とは反対方向へ歩いていた。
その、後ろ姿────。
……急に、苦しくなった。
琴音が他の男と歩いているのを見ただけなのに。
そして僕はわかってしまった。
自分の気持ちが。
気づいてしまった。
……琴音への想いに。