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宵闇
第10章 葉月
琴音は、例の彼とはつきあわなかったが、友人として接するようになったようだった。
学校で、時々見かける。
楽しそうに話すふたりの姿を。
琴音の笑顔が……自分だけのものだと思っていたその表情が、他の男にも向けられている────。
その事実に、胸に沸き上がるぐちゃぐちゃとした汚い気持ち。
ともすればそのまま琴音を汚してしまいたくなるほどの、それ。
だから僕は決めた。
この家から出ることを。
琴音から距離を置くことを。
もしかしたら、今の僕の琴音に対する感情は、疑似恋愛のようなものなのかもしれない。
共に暮らしているうちに生まれた情を、恋愛感情だと錯覚しているだけなのかもしれない。
距離を置けば、いつか……あのときの感情はいったい何だったのかと、そう思えるときが来るかもしれない。
だから僕は、離れることを決めた。
そして、琴音以外を好きになれるなら、それがきっと一番いい。
自分にとっても。
琴音にとっても。
……父さんと、雪乃さんにとっても。