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宵闇
第10章 葉月
もともと地元の大学へ行く予定だった僕が、他県の大学に進みたいとみんなに伝えたとき、父さんも雪乃さんも、僕のしたいようにすればいいと言ってくれた。
琴音は『どうして?』といった表情をしていたが、それでも最終的には納得してくれたようではあった。
進学が決まり、家を出る時に琴音が言った言葉。
今も忘れられない。
『葉月くんがいなくなったら、私、これから誰に相談すればいいの……!?』
不安そうな……泣きそうな顔をしながら。
心が揺れる。
でも──だめなんだ。
『琴音ちゃんは大丈夫だよ』
そんなありきたりな言葉を残して彼女から去った。
自分から手を差し伸べておいて、彼女が僕しか頼れないようにしておいて──挙げ句の果てに、僕は逃げた。
自分の想いが怖かった。
いつか押さえられなくなったら、大切にしたいと思っていたこの四人での生活を僕が壊してしまうかもしれない────。
そう……僕はそれが怖くて、彼女を一方的に放り出してしまったんだ。