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宵闇
第10章 葉月
いくら考えても、答えなど見つけられなかった。
けれどわかっていることはひとつだけあった。
いや──ひとつしかなかった。
ただ、彼女のそばにいたい────。
……なら、どうする?
そばにいるためには、どうすればいい?
考えた末に、出た結論。
そう……なら、自分の想いを封印するしかない。
彼女のそばでよき兄として──そうやって、生きていくしかない。
それしか、ない────。
血の繋がりがない彼女に想いを抱くのはそこまで悪いことなのだろうか……そう思ったことも確かにある。
けれど琴音は、僕を『兄』としてしか見ていないだろう。
そんな彼女を、無理矢理僕のものにはできない。
世間体やモラル。
父さんや雪乃さんへの思い。
そういったものと板挟みになり、きっと彼女は苦しむだろう。そういう子だ。
そんな思いを、僕は琴音にさせたくない────。
それに、想いを伝えて拒絶されたら──僕は琴音の『兄』という存在にすら戻れない気がする。
琴音にとっては大事であろう『兄としての僕』を、僕の一方的な感情で奪うこともできない。
だから僕だけが琴音を想っていても──どうにもならないのだ。
逃れられない想いに抗う術がないのなら。
彼女から離れて、想いを抱き続けていくか。
彼女のそばで、想いを抱き続けていくか。
そのどちらかしかないのなら。
……僕は少しでも、彼女のそばにいたい。