この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
宵闇
第10章 葉月
そして僕は地元で仕事を探し、家から車で30分ほどの距離にある会社に就職を決めた。
距離的には家から通うことももちろん可能だったけれど、そうはせずに会社近くのアパートで一人で暮らすことにした。
家に久しぶりに戻った日。
おかえりなさい、と笑顔で迎えてくれた琴音────。
ただいまと答えながら、こんなふうに真正面から彼女を見たのは何年ぶりだろうと思った。
僕が家を出たときは16歳だった琴音は、もう20歳になっていて……確かに感じた、そのときにはなかった大人な雰囲気。
なのに僕に向ける笑顔は無邪気なままで、僕を慕う眼差しも何も変わっていない。
……すぐに、わかった。
認めざるを得なかった。
この想いが、あの頃よりもさらに募っていることを────。