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宵闇
第10章 葉月
それから僕たちはたくさん話をした。
四年間の空白を埋めるように。
……いいや、まるでそんな空白などはじめから存在していなかったかのように。
琴音に彼氏がいたことも聞いた。
『高2のときに1つ上の先輩と付き合ってたけど、先輩の卒業をきっかけに終わっちゃったんだ』
……そんなふうに彼女は言った。
それを聞いたときに、僕の中に複雑な感情が産まれたことは否めない。
もちろん、僕だって女の子と付き合った経験は何度かあるし、琴音に彼氏がいたことがあったとしても何らおかしなことではないのだけれど────。
……自分からその手を離しておきながら、こんなふうに思うなんて……本当に勝手だな、と自分に苦笑する。
それでも、幸いなことにそれは過去のことであって今ではない。
今は、誰とも付き合っていないという言葉には心底ほっとした。
自分が恋愛対象になれないことはいやというほど理解していても、特定の誰かのものにはなってほしくないという──そういう思いがある。
いつまでもそんなことを言っていられないこともわかってはいる。
けれどせめてもう少し、僕だけの可愛い琴音でいてほしいというわがままな感情が、どうしても自分の中から消せない。
久し振りに彼女と過ごす時間があまりにも楽しくて。切ないのに幸せで、だからもう少し……もう少しだけこのままで、とつい願い続けてしまう日々────。