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宵闇
第10章 葉月
いつか琴音はまた、僕じゃない誰かとの時間を一番大事なものとして過ごすことになるんだろう。
そうやって自然に、僕から離れていくときが必ずくる。
……彼女がそれを望んだときは、決して、邪魔はしないから。
だからそれまではどうか──そんなふうに思っていたのに。
まさか、琴音がそんな目にあっていたなんて────。
僕にしがみついて泣きながらすべてを打ち明けてきた彼女。
……無理矢理、って────。
琴音の手を握る僕の手に思わず力が入った。
唇を、無意識に噛んでいた。
血が滲むぐらいに。
ただでさえ不安でいっぱいなはずのはじめてがそんな状況だったなら、きっとその一度で琴音の心はもう閉じてしまっただろう。
そんな状態でいくら身体を重ねても、得られる快楽などきっとありはしない。
身体だけの関係でも快楽を得られる人ももちろんいるだろうが、琴音はそういうタイプではない。
もう彼氏なんていらない、あんなことしたくない──そう口にした彼女の心を思うと胸が苦しくなった。
悪いのはその男で、琴音は何も悪くないのに────!