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宵闇
第11章 惑い
『今日は仕事があるので先に出ます。
朝ごはん、よかったら食べてください。
何かあったらいつでも来て。
留守のときはこの鍵使ってね。
僕のはちゃんとあるから、これは琴音ちゃんが持ってていいよ。
行ってきます』
え……。
じゃあこれって、合鍵────?
「……いいのかなあ」
受けとることに少しだけ躊躇う気持ちはあったものの、でも──正直に言って、すごく嬉しい。
だって、葉月くんの部屋の合鍵なんて。
それに、いつ来てもいいって。
「なんか至れり尽くせりだなあ……」
勝手に顔が笑ってしまう。
手にした鍵を揺らしながらベッドに戻って、再びそこに身を投げ出し仰向けになる。
葉月くんがいなくて、ちょっとほっとしていた。
だって──どんな顔して葉月くんを見たらいいのかわからなかったから。
息を吐きながら、見慣れない天井を黙って見つめる。
手の中の鍵の冷たい感触は、次第に体温と馴染んでいく。
しん……と静かな室内。
「……葉月くん、昨日ほとんど寝てないよね」
私が来たせいで。
突然、あんなことになったせいで。