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宵闇
第11章 惑い


昨夜の記憶をまた辿ろうと動き出す頭の中。
私しかここにいないなら──と、そのまま目を閉じ、自分にそれを許した。


葉月くんが触れた、私の唇。
そして、私の身体────。


鮮明に、覚えてる。


口づけられたときは本当にびっくりして……戸惑いばかりで。
こんなことしちゃだめ、って理性は抵抗してたけど、でも正直……ぜんぜん嫌な気持ちはしなかった。

だって……あんなキス、はじめて。
柔らかな葉月くんの唇が──舌が、いやらしく私の口の中で動いて。
ぞくぞくが止まらなくて……気持ちよくて、頭の芯がとろけそうだった。

もっとほしくて、自分からねだったこともちゃんと覚えてる。
まざまざとよみがえる記憶。


──かあっと、頬が熱くなった。


あんな私が自分の中にいたなんて知らなかった。

いっぱいキスされて、身体の隅々まで葉月くんに触られて……それに私の身体は確かに反応していた。


……先輩とのそれは全然そんなじゃなかったのに。
そう──愛撫と呼ばれるはずの行為はいつも強引で、乱暴で。正直、苦痛しか感じられなかった。
痛さから漏れてしまう声を気持ちよさから発するものだと判断されたのか何なのか……その手つきが優しくなることはなかった。

はっきり言わなかった私も悪かったのだろう。
でも……どうしても、言葉にはできなかった。
たぶん、もういろいろと諦めていたんだと思う。
不機嫌な態度を取られて、やっぱり言わなきゃよかったと後悔するぐらいなら、自分さえ我慢すればいいと──そんなふうに考えていたような気がする。


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