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第11章 惑い

……ずっと、悩んでた。
私は私の身体が自分でもわからなかったし、付き合ったらたぶんつきもののセックスという行為に対する印象もよくなることなんてないまま、今まできた。
だからもう、彼氏なんて作らずにいようと──そう、思っていた。
あんな行為はもうしたくないって……我慢しながら終わるのをただ待つだけの時間なんてもういやだって、そんなふうに考えてた。

……でも葉月くんは教えてくれた。
身体を愛されることの気持ちよさを。
私の身体の、私でも知らなかったところを。

一方的に私だけをあんなふうに気持ちよくさせてくれた葉月くん。
もし、流れで最後まで求められたとしても、きっと私はあの状態では拒めなかったと思うし、そんな私の様子を見てた葉月くんにもそれはわかっていたと思う。
それでも、そうしないでくれたのは間違いなく葉月くんの優しさで。
そう……ちゃんと一線をひいてくれた。
きっと、私たちの関係を考えてのこと。
本当に『私』のためだけに、そうしてくれた。


「……優しすぎるよ、葉月くん……」


また、ぐっと感情がこみ上げてきて、枕に顔を押し付けた。
感じる、葉月くんの……私の大好きな匂い。


……葉月くんが彼氏だったらすごく幸せだろうな────。


つい、そんなふうに考えてしまったのは仕方のないことだと思う。


だって、かっこよくて。
性格も優しくて、頼りになって。
……あんなふうに丁寧に、愛してもくれて。

葉月くんの彼女になった人、これからなる人が正直言って羨ましい。
私は、なれないから。
だって私は……ただの『妹』だから。

妹だから葉月くんがこんなに優しくしてくれるってことぐらい、わかってる。
妹じゃなかったら私なんて、存在にすらきっと気づいてもらえてないはず。