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宵闇
第11章 惑い
「私って運いいなあ……」
はは、と笑おうとしてもなぜかうまくできない。
それでも無理矢理に作ってみた。
「ほんと……恵まれてる」
だって私が葉月くんの妹なのは事実で。
私が葉月くんが大事なように、葉月くんにとっても私が大事な妹であることに間違いはないと思うから。
だからこそ、こんなことまで私にしてくれるんだろうから。
「……っ」
なのになんでこんなに哀しいんだろう────。
……きっと、頭が勘違いしちゃったんだ。
あんなことされたから、勘違いして思っちゃったんだ。
『妹』じゃなくて……ただの女の子として見てもらいたいだなんて。
葉月くんに愛されてみたいだなんて。
「は……」
ばかなこと考えてるなあ……と、漏れた溜め息。
そんなこと、無理に決まってる。
葉月くんは私のことは妹としか見てないのに。
それぐらいわかってたはずなのに。
なのに……なんで頭の中がこんなに葉月くんでいっぱいなんだろう────。
「……苦しいよお」
思わずそうこぼすとなんだかもっとそう感じて、違う──と、言葉にして打ち消した。
きっと、忘れる。
だってこんな想いは一時的なものだから。
夜があまりにも衝撃的だったから……だから、こんなふうに思ってしまってるだけだから。
時間と共に昨日のことを忘れたら、この想いも一緒に消えていくに違いないから。
ぎゅうっと抱きしめた枕。
葉月くんのことを……葉月くんとの関係を考えるだけでたまらなく胸が締め付けられるのは、そう、きっと今だけ────。
……鼻の奥がつんとする。
溜め息と一緒に少しだけ溢れた涙が、目尻からこぼれて枕へと染みていった。